不定期連載コラム

ブラス「第三世界」シリーズ

筆者紹介

TATSU

ある時はホルニスト、ある時はベーシスト、そしてまたある時は鬼の集金人(笑)…などなど
様々な顔を持つ我が団のユーティリティプレイヤー。
様々な音楽ジャンルへの造詣はマリアナ海溝より深く、所有する音源は空の星よりも多く…
また、様々な楽器を所有しており、そのすべてを使いこなすべく日夜トレーニングに励む。
最近は職場に対し「作曲業」という副業を申請して見事に許可されたという。
「体がいくつあっても足りない」とは、まさに彼のためにある言葉であろう。

そんな彼が、このページのために書き下ろし?てくれたディスクレビュー。
とくとご覧あれ…

 

もくじ
(見たいところをクリックしてご覧ください)

- 口上 -

#1 JAMES BROWN/LOVE POWER PEACE 
(2003.1.13)

#2 THE BRIAN SETZER ORCHESTRA/THE DIRTY BOOGIE
(2003.1.27)

#3 WEATHER REPORT/BLACK MARKET
(2003.5.3)

#4 RED ZEPPELIN/DVD
(2003.6.12)

 #5 松平 健/マツケンサンバII
(2004.7.14)

 #6 古謝美佐子/天架ける橋
(2005.2.14)

 #7 TATSU/CLOUDS
(2005.4.5)

 #8 KLAFTWERK/Minimum-Maximum
(2005.6.26)

#9 MILES DAVIS/ソーサラー
(2005.9.25)

 #10 セニョール・ココナッツ/YELLOW FEVER
(2006.5.25)

#11 デューク・エリントン/HI-FI ELLINGTON UPTOWN
(2006.9.25)

- 口上 -

このシリーズ、実はあちこちで5年前くらいからやってまして、
後が続かなかったり追い出されたりで至って不人気の投稿となっております(笑)。
今回お許しがあり、この地において不定期連載させていただくことになりました。

スタンスはほとんど変わらずにやろうと思いますが、
友人のHPで載せておいたのが消されてしまった関係で、
また新たに仕切りなおしのつもりで始めますのでよろしく。

なお、あくまで「BRASS」の音が出て来る名盤・珍盤を
ご紹介しようと思いますので、どうぞお付き合いください。

2003年1月

TATSU

 

#1

「JAMES BROWN/LOVE POWER PEACE」

いきなりJB(笑)。しかも、コテコテの(笑)。

(某仏人風に)日本では、JBと言えば10年前くらいにカップヌードルのCMに衝撃的に出現、
約70歳(正確な年齢不詳)とは思えぬ華麗なダンス(?)を披露したことで名を知られる方。
いい加減ヅラでしょ?と言いたいあの髪の毛、触ってみたい。

さて「8時だヨ!全員集合!!」という幻の大番組がその昔あった。
今やドリフターズ事務所は風前の灯火・・いやそういうことではなくて、
あの番組の凄かったのは必ずバックに「オーケストラ」がいたこと。

そう、「岡本章生とゲイスターズ」。

あの番組の歌伴だけでなく、場面展開やちょっとした効果音は皆あの人たちがやっていた。
彼等のお陰でヒゲ・ダンスや早口言葉(あれって、ゴスペル・ショウそのもの!)も
可能になっていた訳だし、よく考えたら凄いバンドだ。
御覧になったことがある方は「全員集合みたいなサウンド」と言えば
大体の感じは思い出していただけることだろう(笑)

で、このアルバムはその「全員集合サウンド」なのだ(爆)。
いや、どっちが本家なのか分からない(たぶんこっち)。
でもこのアルバムが出たのはずっと後年だったからこれを手本にした訳ではないはず。
しかしここで鳴っている音、これはドリフだ!
逆に言えばこんな音が毎週土曜日TVから流れていたと言っても過言ではない。
JBのシャウト、これって
「東村山一丁目」だ(笑)。
そう言えば志村けんはすんごいソウル・ファンだと聞いたことがあるような・・・。

 JBは自らのコンサートは全て「ショウ」と言い放ち、
バックのミュージシャンはとにかく「熱いプレイ」をすることを求めた。
わざわざドラマーは2人用意され、交代で叩かせたのも常に最高の演奏を求めるが所以だ。
聴けば分かるがホーン・セクションは全力でプレイし、
最後のあたりは音がヤバい所もあるが物凄いサウンドである。
ハイノート連発だがJB自身がコレでは手を抜く訳にはいかない。

熱い!

あっと言う間の73分間だ。

 〜パフォーマーの中で、JBのような人物を僕は今まで見たことがない。
彼は会場の観客をたった1人で掌中に収めてしまう。
彼は過小評価されていると思う(マイケル・ジャクソン)〜

(2003.1.13)

#2

「THE BRIAN SETZER ORCHESTRA/THE DIRTY BOOGIE」

はっきり言って卑怯である。これをやっちゃ卑怯である。
いや、これをやったら最後だ、だから皆ここからなるべく遠ざかり、
自分の音を求めて旅立っていき、それぞれのジャンルを作っていったのだ。

このアルバムは、いやこの音は「禁じ手」に他ならない。
だから悔しいのだ。
「やられちまった」という感じだ。

本当に真っ当に、ロカビリーというかスィングというか、
「マンボNO.5」のような痛快さと「キャラヴァン」のような妖怪さを
裏表にしたようなこの音(?)に生きている人には、
これは天の啓示のような作品である。
ブラス・ファンならば思わず楽譜を探したくなる内容だ。

ジャズ界に限らず、こういうオーケストラを現代で運営していくのは難しい(吹奏楽団も!)。
だからこういう音は新録で少なかったのは当然である。
逆にこういう音楽は現代では触れる機会が少なくなった。

ブライアン・セッツァーはそこに目をつけた。

本人の長年の夢だったらしいのだが(気持ちが分かる内容だ)
それにしてもこの確信犯ぶり、痛快である。

それと、アレンジが素晴らしい。こんな音が後ろで鳴ってたら、
ギター弾くのもたまらないだろう。

羨ましい。

そして、誰も羨ましかったのだ。

全米POPチャートベスト10になった(なんかプロジェクトXって感じ)。

ライブを収めたDVDもあるが、その確信犯ぶりが余すところなく収められている。

ウチの演奏会でこういうのできないかな?

(2003.1.27)

#3

「WEATHER REPORT/BLACK MARKET」

ウェザー・リポートというより、ウェイン・ショーターです、今回の主人公。

ウェイン・ショーターといえばアート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーを皮切りに
何と言ってもマイルス・デイヴィス中期に重要なサイドメンを勤め、
そしてマイルス以後はこのウェザーでの活躍が有名。

もちろんサックス奏者としての腕もスゴイが、どちらかというと
「すごくヘンだけど耳に残る名曲」
を書くコンポーザーとしての実績が大きい。

マイルスの時代でも「ピノキオ」や「ネフェルティティ」、「サンクチュアリ」みたいな
凄くトンだメロディーだが、不可思議な匂いを発する曲をたくさん書いている。
それはウェザー以降も同じで、「奇術師」や「ヤング・アンド・ファイン」みたいに
何だか気味が悪いけどもう1回聴きたいようなものばかりだ。

然しながら、このアルバムのショーターはやや違う。

もともとバリバリ吹くタイプというより(いや、そういう時代もあるけど)は
ヘンな音を探して吹く、或いは響かせるタイプの人なのだけど、
このアルバムでは客観的に自分の音をバンドの中でどう配置させるか・・
なーんて常日頃冷静に考えてそうなショーターではなく、
・・魂を悪魔に売り渡したかのような、「非日常」のショーターになっている。
(裏ジャケットの目付きもいつもと違う、怖い)

「エレガント・ピープル」のソプラノは凄く邪悪な匂いがする!

ちょうどバンドのメンバーの入れ替えがこの時期にあったことと、
プライヴェートでの諸問題(?)が精神状態に反映したのかそれはわからないが、
このアルバム前後のショーターは他の時代にはない凄みがある。

同時期のものとしてはジョニ・ミッチェルの
「ドンファンのじゃじゃ馬娘」(本当にそういうレコードあります!)でも
邪悪サウンド響きまくりです。

ソプラノってヘタしたらポヘーと鳴らすだけで結構何にでも合う便利楽器なんだけど、
こういうドス黒い音も出るんです。

ちなみにこのアルバム、ベースの天才・ジャコ・パストリアスが
メジャーになった作品です。従ってベースもヘンです

ちなみにショーターは御齢70歳、新作も出てます。まだまだ元気!

(2003.5.3)

#4

「LED ZEPPELIN/DVD」




話題盤だが、およそBRASSとは関係ないような・・・

いや、ジョン・ボーナムのドラムに震えてくれという意味で、半ば強引に(笑)
ZEPの山陰地区渉外担当を自負してるので強気にやっちまえ(笑)

ツェッペリンの成り立ちについて、もはや解説するまでもない、
いや解説できないくらい神格化されているのでどういう方々だったのかは
ワーナー・ジャパンのHPで確かめてもらうとして、既にこの世に存在しないバンドである。
実質稼動時期は1968〜1980年なのでリアルタイムで体験した人はほとんどいないだろう。
「ロック・クラシック」とも言える存在である。

ところが!このDVD見てくれ!

1970年のロンドン・ロイヤル・アルバート・ホールなんかは真っ青になってしまう。

本当にこれ33年前のバンドか!?

今こんなのがステージに出てきてこんな演奏始めたら失神してしまう。
元々のレコードをよく聴いていればいるほど、スタジオ録音のアレンジから逸脱しまくり、
曲はあっちこっちへ伸張され、あっちこっちから引用が入り、
ほとんど全編アドリブの嵐である。

「ヘヴィ・メタルの元祖」とかなんとか言われるが、これ見てそんなこと言えるのだろうか。
ちょっと音が太いジャズ・グループと言った方が正確なんじゃないかと思う。
しかも出てる音はその瞬間瞬間が発明の連続で、噴火し続けている!

そしてジョン・ボーナムだ。
この人自身がロックのドラムの開発者であると言っていい。

例えば曲が終わって最後に

「ダパトトン!」

というオカズを入れるが、これボーナムの発明で
これ以前はこういうことをする人はいなかったのだ。

その他、おいしいオカズが満載で、しかも発明者本人の
異常な音圧(!)で再現され、そのさまを映像で堪能できる。

バスドラの連打もフレーズの中で自由自在に蹴り込まれ、
しびれまくりである。そしてボーナムによってたった1人で醸し出される

「ノリ(グルーヴ)」

ボーナムはたった1人でロックバンドである。
しかしティンパニの皮って簡単には破けないもんなんですか?

ROCKのありとあらゆる魅力が、このDVDにはタップリと詰め込まれている。
DVDとしては初の発売週初登場での全米第1位を記録!

(ちなみに同時発売のCD『HOW THE WEST WAS WON』は79年以来24年ぶり、
3枚組CDとしては初めての初登場での、全米・カナダ第1位!)

(2003.6.12)



#5

「松平 健/マツケンサンバII」




まず、NHKが気まぐれに春先に
「NHK歌謡コンサート」
にマツケンを出演させたのが全ての始まりだった。

見た誰もが
「あれは幻だったのだろうか?」
と衝撃を受け、周りの友人知人にその衝撃を吸聴した。

どうやらBSでも再放送されたらしいのだが、
それにしても合計2回のみのオンエアである。
いかにこの歌(踊り)がインパクト十分だったかを想像して欲しい。
ついでに言えば図らずも「歌謡コンサート」が
意外に見られている証となったのだが。

もちろん、マツケンの新宿コマ公演では定番中の定番で
(今回「マツケンサンバT」も収録。この曲はUだったのだ!)
マツケン本人にとっても
ディープなファンのオバチャン達にとっても
特にどうということはない、
「六甲おろし」
みたいなものだったはずだ。

しかし、なんじゃこれは!!セニョリータ!!

当初、
「芸能生活30周年」記念シングルとして普通に出す予定が、話題沸騰のため
「特典映像のDVD」をプラスしてリリースとなった。
当然である。それが正解である。

ビバ。

普段、難しい局面で悩み、閉塞している人にこそ、
この一夜限りの道楽のようなビデオをお奨めしたい。
脳が溶けます。

響けボンゴ。

おっと、BRASS的には真っ当なサンバのホーンです。
イントロのフルート・ピッコロや猪木のテーマのごときラッパは
果たしてミュージック・ハチではどのように表現されるでしょうか?

なんて、付け足しみたいな・・・・

オ・レ!!


(2004.7.14)



#6

「古謝美佐子/天架ける橋」




最新作とはいえ早2003年のもの。

ただし、本人がマトモにリリースしたものとしてはおそらく
完全なフルアルバムとしては最初なのではないかと。
(当時49歳にして!)

4歳でステージ・デビュー、
坂本龍一のアルバム『NEO GEO』参加以降本土でも知られるようになり、
ネーネーズ初代リーダーを経て現在ソロで活動中。

沖縄民謡界(?)もやはり流派があるらしく、
りんけんバンドの照屋林賢さんとか嘉手刈林昌さん、
「ハイサイおじさん」の喜納昌吉さんなどの大家のほか、
いわゆる「ウタジャ(歌者)」といって祝い事などに呼ばれる歌手など実に様々。
また島ごとにも少しずつ違う民謡が伝わっていたり、
現在も新作が作られたりしている。
古謝さんは「ウタジャ」になるのかな?

このアルバムの最大の売りは
「胎教によい」
と口コミで拡がった
「童神」のオリジナルが収録されていることだが、
そのほかもかなり良い。

個人的には自らのサンプリング?とも言えるレコードデビュー曲
「すーしすーさ」の再演、
聴くと家にすぐ帰りたくなる
「家路」(もちろんドヴォルザーク)、
これぞ本領発揮!の
「ヒンスー尾類小」(三線のみによるライブ録音)といったところか。
全編佐原一哉による編曲で沖縄のレコードによくあるカラッとした風情にとどまらない、
彩色豊かな作品となっている。

実は、
「古謝+夏川りみ」という恐るべき組み合わせのライブを大社町で観ちゃったのである。
夏川だけでも何度も鳥肌が立ったが、
古謝さんはやはり別格というか
圧倒的存在感というか
ただのオバさんというか、
Tシャツで歌ってました(笑)

2人同時に歌われるとかないませんな。こんなの絶対にほかでは体験できないと断言します。

お近くに来られたらぜひ。


(2005.2.14)



#7

「TATSU/CLOUDS」




さて、自分の作品をレビューするのはどうかとも思ったものの
販促活動
と考えて積極的に投稿してみたい。
手ボメかなー??

「よさこい」というのは、実際に触れてみるまでいかなるものか全然知らなかった。
土佐の高知生まれのこの祭は今や全国に波及し、
普及団体
「よさこい日本」の勢力は拡大する一途らしい。

実際子供やオバチャンもガンガンで踊っている。

さてよさこいの最大のポイントは
「音楽・衣装・振り付け」である。
衣装は何とかなりそうだが
音楽と振り付けはどこも苦労するところである。
特に音楽は既製品が少なく、どこのチームも血眼で捜している。

私のところに最初の依頼が来たのは2002年のことだった。
もちろんよさこいなどというものは眼中になく、
「4分くらいのダンス・チューンを」
ということでデモテープの素材から部品をかき集めた。
こうして最初の“よさこい曲”「
神氷(かんぴ)」が世に出る訳だが、
どうしたことかこれ以後依頼が次々来るようになった。

また「楽舞踊」というチーム専属になって現在に至るが、
よさこいに関わって以降の曲の作り方もかなり変わった。
特に笛や鈴、太鼓のような和楽器の素晴らしさを再認識した。
また基本的には依頼者との対話の中から曲を組み立てていったのだが、
その段階での精神的な影響も多々あったと思う。

このアルバムは私の作品でありながら決してそうではない。
普段ならまずやらない「禁じ手」もためらいなく使っている。
その意味で果たして座して聴くに耐えられるものかは何とも言えないが、
まずは立って踊って聴いて欲しい(笑)

このアルバムはもちろんレコード屋にはありません。
私のサイトへアクセスしてください。よろしく。

TATSU氏公式サイト「CYBER HEAVEN RECORDS」へ


(2005.4.5)


#8

「KLAFTWERK/Minimum-Maximum」




クラフトワークは71年デビュー以来、未だ現役である。

メンバーは入れ替わるもまさしくこのバンドの
頭脳
であるラルフ・ヒュッターとフローリアン・シュナイダーは不変である。
というよりステージ写真やプロモート映像を見た限りでは、
言われない限りメンバーが入れ替わっていることに誰も気付かないだろう(笑)

何が凄いって、ハッキリ言って
「テクノ」という音楽を創造したのが彼等である。
例えばファンクやソウルといったジャンルがブラック・ミュージックを底辺にしているのに対し、
テクノはクラフトワークが「ゼロ」から作り出したのである。

それだけでも驚嘆に値するが、時代を経て今2005年に至って、
初めて時代と彼らの音楽がシンクロしはじめている。


それはこのライブ盤を聴けば全て分かる。
例えば75年の「放射能」や78年の「ロボット」などはリズムの組み立てが若干補正されているものの、
曲そのものは全く風化せず超カッコイイのである。

新型ビートルというよりは、
旧型ビートルなのに軽くBMWと高速で張り合っているのである。

彼等のスタジオ、デュッセルドルフの「クリングクラングスタジオ」は、
最初からクラフトワーク専用のスタジオとして建設されたことで知られ、スタジオ自体が楽器のようなもので、
アルバム『アウトバーン』がヒット(74年)した際にはコンサートで再現することが不可能で、
アメリカ公演はほとんどテープ(!)で行った。

その後スタジオから序々に機材を運び出せるように改良が加えられ、
完全に生演奏が可能になったのが81年(!)。

その後の楽器の技術進歩が速過ぎて彼等がついていけず
アルバム『テクノポップ』は発売中止(83年)、
『エレクトリック・カフェ』(86年)以降は楽器の進歩が一段落するまで待つことにし、
ようやく整理がついて『ツール・ド・フランス』が出たのが04年(!!)
と、マイ・ペースと呼ぶには度が過ぎるが、
現在はSONYのVAIO4台でライブする彼等は掛け値なしにクールでカッコイイ。

しかも現在の方が彼等の音楽はフィットしまくっている。
今名作である『ヨーロッパ特急』(77年)や『コンピューター・ワールド』(81年)を聴くとよい。
違和感が全然なくて空恐ろしいくらいである。

ドイツのグループだからということはないが
シンプルなテーマや無駄を削ぎ落としたその音楽は
逆に時代にアピールしているのである。

そして熱狂する我々がいる。

邦盤には「電卓」が収録されているが、伝説のバンドと一緒に
「ぼくは音楽家、電卓片手に・・・」
と歌えるのが何とも嬉しい(日本語で!)。

しかもDVDも出るらしい(HPにアナウンスあり。ちなみにこのHPも彼等らしい造り!)。
こちらは映像集としては彼等初のビデオである。

34年目にして、クラフトワークが旬である!



(2005.6.26)


#9

「MILES DAVIS/ソーサラー」




 このコーナーをやってて、1度は触れないといけないマイルス。参るス
いや、本人のアルバムにも
『マイルス・スマイルズ』とか「SAVID」「SELIM」(意味分かりますね?)
なんて曲があるので・・・取り消し。

 どれがいいかと言われると、これは困ってしまう。
ご存知の通りキャリアの始めはチャーリー・パーカーのビ・バップで、
最後はイージー・モービーとのヒップポップだったので、
これは聞く人の趣味に一番近いものを奨めるしかない。
よく言われる「アコースティック」「エレクトリック」の境目でおおまかに別れるらしいのだが、
根気強くトータルで聴いていくと、
ソニー・ロリンズと一緒にブロウしていようが、
チックと電子音ごっこしていようが、
金ラメの服着てステージで万歳していようが、
関係なく「マイルス」の
意志みたいなものがオーラをまとって音として現れる。
マイルスの
「匂い」がしてくるのだ。

それが最もよく分かるのが『アガルタ』で、
完璧なエレキ・バンドで1発きりの一大ハチャメチャセッションを2時間近く展開するのだが、
マイルスが吹いていない時でもスピーカーを通してマイルスがそこに居るのだけは
「間違いない」
という体験ができる。

ただしこのアルバムはその体験が最も分かり易いと同時に聴くのに体力が要る。
1回頭の中を掃除してもらうくらいのつもりで聴く覚悟がいる。

 そこで、その体験が割りとソフトにできるアルバムというのが、ワタシはこれだと思う。

まだ電気に差し掛かる前で、次作『ネフェルティティ』とは姉妹盤なのだが、
「動と静」で言えばこっちの方が
「動」である。元気なこっちを聴いていただきたい

 このアルバムの前はいわゆる「黄金のクィンテット」なワケで(これもそうだが)、
いわゆるフリー・ブロウィングなマイルス、
プレーヤーとして一番脂が載っていた時期である。
何せマイルスがちょっとその気で
プッ
と吹くだけでその何倍の説得力と反応を返すリズム陣
(ハンコック、ロン・カーター、トニー)がいたら、
そりゃ楽しいだろう。

よってアコースティックで表現できる最大形のジャズが
例えば『フォア・アンド・モア』などで展開されている。
自由自在、と言っていいだろう。

 そこから少しづつ脱し始めた、プレイではなく音楽全体で
「マイルス」
を感じさせる方向に傾き出したのがこのアルバムと言える。

このアルバムではマイルスはほとんど曲を書いておらず、専らメンバーの創作に任せている。
前だと「この和音にはこの音」みたいな細かい指示をしていたのが
「そこはプレイしろ、そこはプレイするな」程度の指示に変わったらしい。
むしろこっちの方が指揮者的であるが。

究極は何と
マイルスが登場しない曲まである。
しかし聴いてみると
「マイルスのアルバムにないと恰好のつかない曲」
なのである。本当にそのように感じる。

 いっぽうで、まだマイルスはブロウィングの影もまだ引きずっているし、
トニーもちょっと意識的にまた少しスィングに返したようなシンバル・ワークである。

結果、とてもジャズを感じさせながら、しかしマイルスの
「匂い」
が伝わってくる微妙にブレンドしたアルバムである。

ここから以降のマイルスは1作1作劇的に変化していくので、
このテイストのマイルスはこれ1作だけである。
しかしその後を聴き進めば、まさにこのアルバムこそ
「マイルス以外の何者でもない」
彼の音楽の原点である。

 でも最後のオマケの歌入り曲は
急にど演歌を聴いてるみたいでガクッと落ちます
このアルバムの最大の謎。




(2005.9.25)


#10

「セニョール・ココナッツ/YELLOW FEVER」




前々からこの第3世界にも
YMO(イエロウ・マジック・オーケストラ)
を1枚はとは思っていたが何せきっかけが難しかった。
そもそもエレクトロな音で
管の「カ」の字もないし

しかしここにとうとう難癖をつけて取り上げることが可能になった。
10本目レビュー記念!まさかYMOがラテンになろうとは…

セニョール・ココナッツことアトム・ハートは
元々90年代終わりに細野さんとコラボしていたりしていて、
テクノの申し子のような方である。
それがこの変名「セニョール・ココナッツ」となり、
これまでもディープ・パープルやマイケル・ジャクソンをラテン・カバーしまくって
その筋では有名だ。

そしてとうとう満を持してYMOに取り掛かった。

聴けば分かるがチャチャチャやメレンゲ、サンバと目が回るような忙しさだ。
サウンドの中核を成すのはもちろんビック・バンド・サウンド。
最後は勢いなのだ。
こういうアクセントが我々にも欲しい。


・・・・さて、ここまでは形式的に(笑)

とにかくも〜、選曲の妙である。
誰が「キュー」や「音楽の計画」の
能天気ラテン・ファンクバージョン
など思いつくだろうか。
「マッド・メン」に至っては今様のテクノ編集手法が用いられていて
単なるラテン・カバーではない。
大体に、
YMO本人達が参加している(笑)
ただし、
教授の電気ピアノって、たったそれだけ?とか(笑)
細野氏は結構本気だったり。

名曲「ライディーン」もまさかシロホンがあのシーケンス・パターンを奏でようとは!
全体に徹底して原曲が吟味され尽くされ、
痒い所に手が届いているアレンジだ。
元曲を知っていれば知っているほど、
片えくぼになること間違いなしだ。
恐るべし、アトム・ハート。
君は仲間だ。

個人的にツボにハマったのは「LIMBO」。
だって
高橋幸宏氏本人のコーラス付きで、曲の展開にヤラレタ!という感じ。
・・・コアなYMOファン以外は分からない文章でしたね。
何も考えずどうぞ。

「ファイアクラッカー」って結構そのまんまだな。
 



(2006.5.25)


#11

「デューク・エリントン/HI-FI ELLINGTON UPTOWN」




 『スゥイング・ガールズ』で脚光を浴びたジャズ・オーケストラ・スタイルの音楽は、
現代ではほとんど廃れてしまったものである。
意欲的な大学のジャズ研とかがビック・バンド・スタイルの場合があるが、これは例外。
市場に出回るジャズとは、マイルスやコルトレーン以降の5〜6人のコンボか、
ジャズ・ボーカル、いわゆるフュージョンとかがほとんどである。
そこへくだんの映画のヒットにより
ビック・バンドが脚光を浴びた。 
ところがいざ始めてみれば、当然のことながら生きた手本がほとんどないのだ。
そこで映画にも出てきたこのデュークに行き当たる訳だが、聴いてビックリである。
SP盤の音質から繰り出される、
強烈なフック。
スイングとはその昔は強力なパワーを秘めたポップスだったのだ。

 ロックもレゲエもビ・バップもヒップ・ポップもなかった70年前に、
デュークは全く孤高の存在だった。
そしてそれはおそらく今もだ。
この『UPTOWN』は50年代初期の録音で、
それまで戦中戦後のエリントン楽団を支えてきたソロ・プレイヤー達が
一斉に脱退
してしまっているのにも拘わらず、
そんなことを微塵も感じさせない強力なプレイで貫かれている。
この時代、いわゆるコンボ・ジャズ(クワルテットやクインテットの少人数のバンド)が台頭し、
ビック・バンドは衰退して経営難に陥っていた。
エリントンも例外ではなかった訳だが、意固地にもこれだけのものを作り続けていたのだ。
ちょっとエリントンが本気を出せばモダンやビ・バップなど到底歯が立たない。
何しろその音楽が今もって革新的で、
そこに全てが含まれているから。


 このアルバムの後1956年のニューポート・ジャズ・フェスティヴァルでの劇的復活もあるが、
ここではその前の胎動というか、世間の動向などなんのその、
これを信じてやっていきます!的パワーに溢れている。
「ムーチ」のノスタルジックなクラリネットの響きは今聴いてもたまらない。
そして定番「A列車」のこの勢い!
イントロのデュークの茶目っ気たっぷりのソロも含め、
我々はまるでお釈迦様の手のひらの上で遊ばされている感じだ。
本来のジャズの楽しさは何か、はこれを聴けば即刻で納得できると断言しよう。
それにしても「キャラヴァン」だの、「ソフィスティケイテッド・レイディ」だの、
どうしたらこんな曲が書けるのだろうか?
聴いているうちに寂しくなってくるのは、
こういうジャズ・ジャイアント達がもはやこの地上にいないことである。
一体彼らはどこへ行ってしまったのだろうか・・・。

「ミュージシャンと名のつく者は、1日1度はデュークに感謝を捧げるべきだ」
マイルス・デイヴィス




(2006.9.25)




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