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〜挑戦者たち?〜


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第1話
「波の音を聞け オーシャンドラム自作奮戦記」



【プロローグ】

吹奏楽ファンには有名な曲「海の男達の歌」。
曲の冒頭ではオーシャンドラムによる波の音の効果音が使われている。

波の音は、柳行李(やなぎごうり)に小豆を入れたいわゆる「波ざる」が、
舞台の効果音などで昔から用いられてきた。

しかし、吹奏楽で使うには「波ざる」の音では小さすぎる。
それに、大きな柳行李など、今時はなかなか手に入らない。
国内の様々なバンドが、頭を悩ませていた。


2004年、島根県。

ここにも途方に暮れる一つの吹奏楽団があった。
平田市民吹奏楽団。団員わずか40人あまりの、田舎の小さな楽団である。

数えて第10回となる演奏会で、「海の男達の歌」を取り上げることにした。
が、肝心の波の音を出す楽器を確保するめどは、全く立っていなかった。

10月の演奏会まで、あと2ヶ月しかない。

団員達は、焦った。



 「私が、やりましょう。」


その時、一人のヒマ人が立ち上がった。


 これは、オーシャンドラムの自作に魂を注いだ名もなきヒマ人の、ドラマである。




【第1章 開発】

ヒマ人の名は、断腸(仮名)。
中学の頃から、ユーフォニアム一筋の、吹奏楽馬鹿だった。

平成5年、平田市民吹奏楽団が発足。以来、楽団発展のために、心血を注いだ。
楽団内の困りごとがあると、そのたびに「何とかせねば」と、一人で空回りする男だった。

そして今回もまた、「何とかせねば」と思ったものの、
パーカッションに関する知識は、皆無。
まして子どもの頃の、図工や技術の成績はからきしだった。


「本当に、できるのか…」

苦悩の日々が、続いた。


オーシャンドラムは、楽器として市販されている。
一般に、オーシャンドラムとして市販されているものは、
タンバリンを2枚合わせにして中にビーズ玉を入れたような鳴り物である。
マラカスと同じようなラテンパーカッションの一つである。
その音は明るく、乾いた、南洋の海の音だ。

「これではダメだ。もっと憂いのある、夜明けの荘厳な海の音でなくては。」

図書館にこもっては、擬音に関する文献を、読みあさった。


ある夏の日、断腸(仮名)は自宅の庭先を何気なく見ていた。
そこにふと、あるものが目に止まった、

ホースを巻く、ドラムリール。はっ とした。

「これを使って、ウィンドマシーンの構造を応用して音を出せないか。」

断腸(仮名)、DIY用品店に、駆け込んだ。




【第2章 製作】

オーシャンドラムの製作が、ついに始まった。

自作にあたって、断腸(仮名)、3つの方針を立てた。
○ねじ・釘を一切使わない、作りやすい構造にすること。
○安く、簡単に入手できる材料で作ること。
○誰にでも音が出せるような、扱いやすい設計にすること。

図工の成績はからきしの断腸(仮名)だったが、
なぜか子どもの頃から得意だったものがある。

ガンプラ作り。

その経験を生かすべく、材料は基本的にプラスチック類と接着剤とし、
百均やDIY用品店で手に入るものばかりを揃えた。


「これなら、自分にもできる。」

ひとすじの光が、見えた。


〜オーシャンドラム 材料〜

 ホース用ドラムリール(50m用、径の大きなものがよい)
 薄手のアクリル板 1〜2枚
 葦簀(よしず)とゴザ 90cm×180cmのもの 各1枚
 水槽に敷く底砂、クッション用ビーズ、そば殻など 適量
 塩ビ管(15〜20mm) 3本
 その他、強粘着性の両面テープ、ビニルテープ、コーキング剤、接着剤など
 予算:ものにもよるが大体5〜6千円



閃きだけで楽器を製作する未知の作業。

失敗は、許されない。

気温40℃以上ある室内での、過酷な作業。
脱水症状で、何度も倒れそうになった。

しかし断腸(仮名)、
ガンプラ作りで培った技と、意地がある。


金ノコで、ドラムリールを真ん中から切断する。
3本の支柱も、根本から切除する。





胴筒の素材を作る。
ゴザに木工用ボンドを塗りたくり、葦簀を貼り付けていく。

「波ざる」の音を目指し、和の素材にこだわる。




ゴザの幅に合わせ、ドラムの輪軸を伸ばし、再接する。
アクリル板を丸めて強粘着性のビニルテープで固定した。
さらにアクリル板の余った切れ端を使って、
ドラムに胴筒を取り付けるための「のりしろ」を作る。




作った胴筒を、ゴザの面を内側にして両面テープとビニルテープでドラムに巻いていく。



巻き終わる前に、音を出すための具材を胴筒に入れてやる。
粒子の材質や量で、微妙に音が変わってくるのでいろいろ試す。
その結果、熱帯魚などの水槽に入れる細目の底砂と、クッションビーズを
1:1の割合で配合することにした。

支柱にする塩ビ管をドラムの幅に合わせて金ノコで切り、
コーキング剤で接着。



「できた…」


2004年、記録的猛暑の、夏だった。



「知恵と工夫で、困難の荒波を乗り越えていけるように」との願いを込めて、
海漢壱号(うみおとこいちごう)」と、命名した。


「海漢壱号」を練習場に持ち込んだ。
え、ナニ?と興味を示す団員。

おもむろに、ゆっくりと、ハンドルを回した。

次の瞬間、団員たちは驚いた。
「海漢壱号」が奏でたのは、断腸(仮名)が目論んだとおり、

夜明けの荘厳な海の音。

彼らが幼い頃から聞き親しんだ、日本海の波の音だった。

断腸(仮名)の閃きが、形となって皆に認められた瞬間だった。




【エピローグ】

こうして完成したオーシャンドラム、「海漢壱号」。

10月。
平田市民吹奏楽団第10回演奏会の日を、迎えた。

しかし演奏会当日、ステージに「海漢壱号」の姿は、なかった。

演奏会の一月前、「海の男たちの歌」は、演奏会で取り上げないことに決めた。
「プログラムの構成上カットせざるを得なかった。

メンバー一同、苦渋の決断だった。

こうして完成しながら、日の目を見ることのなかった「海漢壱号」。
今はただ、いつの日かスポットライトの当たる日を夢見て、楽団楽器保管庫に、たたずむ。


オーシャンドラムを自作した、断腸(仮名)。

この時得たノウハウを生かし、今は簡易ウインドマシーンの製作を、構想中である。
ひらすいのさらなる航海は、まだ終わらない。





【断腸(仮名)あとがき

ウィンドマシーンの自作について開設したサイトはいくつかありますが、
オーシャンドラムの自作について詳しくふれたサイトがなかなか見つからなかったので、
こんなものを作ってみました。

やってることは「できるかな」のノ○ポさん並の工作ですので、
腕に覚えのある方はもっと高性能なものができるはずです(笑)。
お役に立てば幸いです。

ただし、製作におけるトラブルについて、
当方は何ら責任を負いませんので御了承下さい。

また、当楽団からオーシャンドラムの貸出しは行っていません。
自分たちで作る分、うまくできたときの喜びもひとしおですよ。

皆さんも頑張ってみては?




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